「好きなことを仕事にできたらいいよね」
そんな言葉を、よく耳にします。
けれど、私は少し順番が違うのではないかと思っています。
最初から「好きなことを仕事にしよう」と考える必要はない。
興味を持ったことを続け、頼まれたことに応え、少しずつ技術を磨いていく。
その先で、いつの間にか仕事になっている。
少なくとも、私の場合はそうでした。
振り返れば、この20年ほど、生活費を得るためだけに働いた記憶は、それほど多くありません。
例外を挙げるなら、オーストラリアでワーキングホリデーをしていた頃のディッシュウォッシャーでしょうか。
毎日、大量の皿を洗い続ける仕事です。
当時は大変でしたが、今になってみれば、あの経験も無駄ではありませんでした。むしろ、自分がどんな働き方をしたいのかを考える、ひとつのきっかけになった気がします。
子どもの頃、父の影響でサーフィンを始めました。
ただ海に入るのが好きだった少年は、やがてサーフグッズを扱うムラサキスポーツで働き、オーストラリアではサーフィンコーチになりました。
カメラとの関係も、よく似ています。
幼い頃はインスタントカメラで遊び、その後はコンパクトデジタルカメラで日常を撮るようになりました。
オーストラリアへ渡るとき、初めて一眼レフカメラを購入しました。
広大な自然。
見たことのない光。
旅先で出会った人たち。
それらを夢中で撮り続けているうちに、作品を購入してくれる人が現れ、人物撮影を依頼されるようになりました。
「写真家になろう」と決めてから撮り始めたわけではありません。
撮り続けていたら、写真家になっていたのです。
絵を描くことも、昔から好きでした。
友人や知人からロゴやイラストを頼まれ、それに応えているうちに、仕事の領域はホームページ制作や店舗デザインへと広がっていきました。
コーヒーも同じです。
オーストラリアでバリスタという仕事に出会い、帰国後、軽い気持ちでコーヒーの仕事を始めました。
それから十数年。
今では自分でコーヒー豆を焙煎し、世界各地の生豆を仕入れ、商品として販売しています。
当時の私には、まったく想像できなかった未来です。
こうして振り返ると、人生は壮大な計画によってつくられるというより、小さな興味と偶然の連続によって形づくられているのだと思います。
ただし、偶然を未来へ変えるには、ひとつだけ必要なものがあります。
行動です。
人生の転機は、起きた瞬間には転機だと分かりません。
何気なく買った一台のカメラ。
軽い気持ちで始めた仕事。
誰かに頼まれてつくった最初のロゴ。
そのときは取るに足らない出来事でも、数年後に振り返ると、そこから人生の流れが変わっていることがあります。
未来から現在を振り返ったとき、今日の小さな行動が、大きな分岐点になっているかもしれない。
だから、仕事や将来について迷っているなら、最初から正解を探しすぎなくてもいいと思います。
本を一冊読んでみる。
カメラを手に取ってみる。
コーヒーを自分で淹れてみる。
気になる場所へ足を運んでみる。
重要なのは、それが仕事になるかどうかではありません。
心が少し動いた方向へ、実際に一歩進んでみることです。
好きなことは、最初から仕事として存在しているわけではありません。
好きで続けたことに技術が加わり、誰かの役に立ち、やがて対価が生まれる。
仕事とは、おそらくそうやって生まれるものです。
自分の知らない景色は、まだ無限に広がっています。
けれど、その景色は待っているだけでは見えてきません。
次の景色へ向かう入口は、いつも目の前にある小さな一歩です。






















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